ピアノ教室MAREは5周年
晩秋に生まれた私は、忙しなくなる師走直前が誕生日です。
必要に迫られてピアノ教室MAREを始めてから5年が経ちました。
若い頃はピアノの先生になりたくなくて、学校の先生にもなりたくなくて、
教員免許は取ったけれど御免状をもっているだけ。
あちこちのアマチュア合唱団でピアノを弾き、オルガンが弾けるようになりたくてレッスンに通い、
本番が続いて文字通り駆け回っていました。
それでも人に頼まれては、演奏の仕事の合間にほんの少しだけレッスンを引き受けてはいました。
あまり話したことのない身の上話です。
女性にとっては結婚や出産がキャリアに響くことを、身を持って経験して来ました。
長女の妊娠中には出産直前の2週間前までピアノを弾いていました。
次女の出産後は10日で復帰、本番でした。
それも若かったからできたことのように思います。
さらに次女が(かわいそうなことに)生後8ヶ月の時に母に預けてヨーロッパへ演奏旅行へ行きました。
この時はさすがに辛くて毎晩泣きました。
そんなことがあっても、私はずっとピアノを弾いていたかったし、オルガンを弾いていたかったのです。
でも、夫の転勤によって全てが打ち切られてしまいました。
しばらくは上京して本番に出ていましたが、それも少しずつ減っていきました。
みんなが憧れる北の大地で悠々自適だよね、美味しいものたくさん食べられてラッキーだよね、と
悪意のないメッセージが送られて来ましたが、
当の本人はキレイを通り越してうんざりすりほどの雪の生活に嫌気がさし、
引きこもり、暗い気分で過ごしていました。
やがて人のツテをたどって北海道でも演奏のチャンスが訪れました。
ポツリポツリと演奏の場ができていっても満たされない気持ちでいっぱいでした。
この時期は山のように本を読み、イタリア語を習ってみたりと、もがいていました。
仕事のほかプライベートでも様々な経験をして気づけば10年も経ち、
ようやく湘南へ戻りました。
以前のような仕事はなく、それでも自分にできることはピアノしかないとMAREを開きました。
あれから5年が経ちましたが、ありがたいことにピアノを習いに来てくださる生徒さんに囲まれ、
音楽に携わる喜びを噛みしめています。
今私にできることは、恩師が惜しみなく注いでくださった全てを
生徒さんに誠心誠意お伝えすること。これに尽きます。
この秋は、いつまでも暑かったり突然寒くなったりとおかしな陽気でしたね。
私にとっても5年の節目、子育てを終えて介護生活が重くのしかかっていますが、どんな時でも私には音楽が傍にいてくれます。
これほど美しいものを生み出してくれた人がいて、再現してくれる人がいます。
私はその音楽の世界の端っこで、美しいものを分けてもらえているのを実感しています。
この美しい音楽を、来年も分かち合いましょうね。